古い喫茶店で

駅の裏手にある古い喫茶店に入った。重い木の扉を押すと、コーヒーの香りと、低く流れるピアノの音が迎えてくれる。何十年も変わっていないであろう店内は、時間の進みかたまでゆっくりに感じられた。

窓際の席に座って、ブレンドを一杯たのむ。運ばれてきたカップは少し縁が欠けていて、それがかえって心地よかった。

窓際のテーブルに置かれた一杯のコーヒー
縁の欠けたカップ。長く使われてきた証だと思う。

本を読むでもなく、ただ湯気が立ちのぼるのを眺めていた。スマートフォンを鞄にしまったまま、一時間ほど。何も生み出していないけれど、確かに満たされている時間だった。

帰りぎわ、マスターが「またどうぞ」と小さく言った。きっとまた来る。

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